王者・フロンターレ復調のバロメーターは攻撃よりも守備にある
まごうかたなき、完勝劇だった。
川崎フロンターレのホームで行なわれた湘南ベルマーレとの「神奈川ダービー」。開幕から調子の上がらなかった王者は、阿部浩之のテクニカルなショットと、売り出し中の知念慶の4試合連続ゴールで、2−0と快勝を収めた。これで川崎は2連勝を達成。待望のホーム初勝利も手にしている。
2−0の完勝で「神奈川ダービー」を制した川崎フロンターレ 序盤こそ湘南のアグレッシブな攻撃にやや手を焼いたが、15分過ぎからは完全にボールを支配。まるで練習のようなパス回しで相手を自陣に釘づけにし、ボールを失わない時間が長く続いた。
「さてさて、どうやってとどめを刺してやろうか」
川崎のボール回しからは、そんな声が漏れてきそうなほどの余裕すら感じられた。
そのパス回しの中心を担ったのは、家長昭博と大島僚太のふたりである。右サイドハーフとして先発した家長だったが、この試合での役割はほとんど司令塔と呼べるものだった。中央に絞り、至るところに顔を出してはボールに絡んでいく。そのやや後方で大島がサポートし、シンプルなパスさばきでリズムを刻んでいった。
判断のよさもさることながら、ボールを失わない彼らの技術の高さにも舌を巻く。たとえ相手に寄せられても、身体をささっと方向転換させて、空いているエリアにボールを運んでいく。ボールの預けどころがふたつもあるのだから、味方とすればこれほどありがたいこともない。
とりわけ、大島の存在感は際立った。長く負傷離脱していた背番号10は、前節に復帰すると90分間フル出場して勝利に貢献。この試合でも基本技術の高さと視野の広さを生かして、川崎の攻撃をリードした。
「(大島)僚太は常に前を見ていてくれるので、FWとして動きやすい。僚太がいると、前の選手の動きが活性化する」
そう話したのは、小林悠だった。動けばパスが出てくるという信頼関係は、FWの選手に積極性と勇気をもたらすものだろう。
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