改革進行中のセレッソ。指揮官がもたらした「足りなかったもの」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「今日のチャンスは、ほぼゼロに近いと思う。セレッソとしては収穫のない試合だった。フロンターレのポジション取りだったり、パスを出してからの動きやサポートの仕方など、そこは僕たちが見本としないといけない」

 そう話した清武は、質の高い川崎の連動性を目の前で見せつけられた分、もどかしさも大きかったのだろう。

 試合は後半、圧力を強めた川崎にさらに押し込まれ、49分に同点に追いつかれると、その後も多くのピンチを迎えた。だが何とか耐え凌ぎ、1−1の引き分けに終わり、これでC大阪は第6節を終えて2勝1分3敗。黒星先行の状態は続いている。

 それでも試合後の選手たちは、前向きな言葉を発している。

「アウェーで勝ち点を持って帰れたのは、素直にうれしいこと。まだまだ川崎との完成度の違いはあるけど、シーズンを積み重ねていくなかで、1試合1試合、成長して形になっているのを実感できている」

 そう話すのは都倉賢だ。そしてこうも続ける。「このタイミングで川崎と戦えたのは、いい収穫だった」

 その真意は、自分たちの現在地を把握できたからだろう。

 C大阪は前節、ベガルタ仙台相手に質の高いパフォーマンスを示し、快勝を収めた。前々節の浦和レッズ戦でも、逆転負けを喫したものの、相手を押し込む戦いが実現できていた。しかし川崎相手には、ほとんど攻撃の形を作れなかった。より質の高い相手に現実を思い知らされたという意味では、都倉が言うように、いいレッスンになったのは確かだろう。

 組織の中に個性が沈み、こじんまりとしたサッカー。規律を重んじるロティーナ監督のスタイルは、C大阪のクラブカラーに合わないのではないか。試合前はそんなことを考えていた。

 しかし、おそらくそうではない。2017年にルヴァンカップと天皇杯の2冠を達成したC大阪は、着実に強豪クラブへの道を歩んでいる。さらなる高みを目指すために足りなかったのは、個の力に頼る自由気ままなサッカーではなく、揺らぐことのない確かな規律である。

 今は産みの苦しみを味わっているが、着実に改革は進んでいる。規律のなかで個人が輝きを放てるようになった時、C大阪は真の強豪へとたどり着くはずだ。

 大事なのは過去を懐かしむのではなく、未来に目を向けることである。

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