改革進行中のセレッソ。指揮官がもたらした「足りなかったもの」

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 セレッソ大阪の歴史を紐解けば、攻撃サッカーにたどり着く。ステージ優勝にあと一歩に迫った2000年に象徴されるように、「打つべし、打つべし」のスタイルを貫いて、半ば無謀なまでに相手ゴールに迫っていく。

先制ゴールを決めた柿谷曜一朗(右)を祝福する清武弘嗣(左)先制ゴールを決めた柿谷曜一朗(右)を祝福する清武弘嗣(左) リスクを承知で攻める分、大きなしっぺ返しを食らうことも少なくない。大量得点で勝ったかと思えば、見るも無残な大敗を喫することも珍しくはなかった。優勝争いをした翌年に降格してしまう浮き沈みの激しさは(なんと、三度も!)、そのスタイルに起因するのだろう。

 ただし、その不安定さの一方で、香川真司(ベジュクタシュ)を筆頭に、乾貴士(アラベス)、南野拓実(ザルツブルク)、清武弘嗣(セビージャからセレッソに復帰)、あるいは柿谷曜一朗(バーゼルからセレッソに復帰)など、このクラブから世界に羽ばたく攻撃手が次々に生まれているのも、クラブに脈々と受け継がれるこの攻撃的なスタイルがあるからに他ならない。

 サッカー専門誌時代、セレッソを長く担当してきた身とすれば、粗削りで、どこか危うく、だからこそ刺激的で、サプライズに満ちたクラブというイメージは、今も変わらない。

 しかし、そんな思い込みは、現実にフィルターをかけてしまうものだ。4月5日、等々力陸上競技場で見たC大阪は、求められた戦略を忠実に実行する組織的なチームへと整備されていた。

 よく言えば、優等生。悪く言えば無機質。個性派クラブに物足りなさを感じてしまったのは、昔のイメージにとらわれる自身の偏見によるものだと理解している。

 今季、C大阪はクラブ初のスペイン人指揮官となるロティーナ監督を招聘した。2年連続で東京ヴェルディを昇格プレーオフに導いた戦術家は、着実に自身の考えをチームに落とし込んでいるようだ。

 なかでも隙を与えない守備組織は、王者・川崎フロンターレの攻撃も、途中までは無力化した。すでに開幕戦で、ワールドクラスが揃うヴィッセル神戸を完封したその守備力は、とくに前半、川崎相手にも十分に通用していた。

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