イニエスタに見とれる同僚たち。魔法使いのプレーは哲学的で奥深い (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

「アンドレスは、左サイドを中心に"世界"を構築することができるんだ」

 リージョ監督の盟友であり、各地で転戦を続けてきたスペイン人ヘッドコーチ、イニーゴ・ドミンゲスはそう説明している。

「ルーカス(・ポドルスキ)との呼吸は、高いレベルで合っている。それは2年目ということもあるだろう。(スペイン代表、バルサでチームメイトの)ビジャとのコンビネーションのよさについては言うまでもない。アンドレス自身が信頼されているから、周りの選手を輝かすことができるのさ」

 イニエスタの奥深さは、スペクタクルなドリブルやパスよりも前に、まず、ボールを失わない点にある。だから周りは信じて走り出せる。圧倒的なキープ力。どれだけ相手に寄せられても、むしろその力を利用し、軽やかにかわしてしまう。

「自分に対して相手選手が寄ってくれたら、それだけ周りの選手が自由にボールを受けることができる」

 イニエスタは言うが、それはボールプレーヤーとしての信条である。

 2012年EURO決勝のイタリア戦だった。スペイン代表でプレーしていたイニエスタが、5人ものイタリア人選手に囲まれた写真が話題をさらったことがある。その後、彼は包囲網を見事に突破し、屈強なイタリア代表ディフェンダーを手玉に取った。

 イニエスタはどんなときもプレーの渦の中心にいる。彼がパスを授けることで、周りの選手はアドバンテージを得ることができる。その結果、チーム全体に正しいプレーの流れが生まれるのだ。

「アンドレスのプレーは、思わず見とれそうになる」

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