過渡期のサンフレッチェ広島。カギを握るのは武者修行を経た若手だ (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 寺田弘幸●撮影 photo by Terada Hiroyuki

 ポゼッション率の低さは、まさに昨季の広島の課題だった。最優先事項は守備であり、攻撃はシンプルなロングボールが多かった。パトリックの決定力の高さによって得点は獲れていたものの、支配率の低さによって守勢に回る時間が長く、試合運びを難しくしていたのは事実だった。

 ボールを支配するためには、何をすればいいのか――。その最適解が、かつての広島を支えた3-4-2-1への回帰だ。「その経験もあるが、メンバーが変わればやり方も変わってくる」と城福監督が言うように、優勝メンバーが少なくなっているため、当時と同じサッカーとはならないだろう。

 しかし、現在の広島にも感覚的に3-4-2-1に慣れた選手が多くいる。実際に、鹿児島で行なわれていたジュビロ磐田との練習試合でも、最終ラインからボールをつなぎ、ポゼッションを大事にするかつての広島の姿が垣間見えた。

 それゆえに惜しまれるのは、やはり青山の不在だ。的確なパスワークでポゼッションを高められる、このシステムのカギを握る存在であるからだ。

 とはいえ、青山の不在が新たな風を吹かせているのも確かだ。これまで出番の少なかった若手が自らの存在をアピールしようと、積極的な姿勢を見せている。

 その筆頭が、野津田岳人と川辺駿のふたりである。いずれも広島のアカデミー出身の逸材ながら、これまでその能力を発揮できず、広島の中心とは成り得ていない。

 今季、ベガルタ仙台からレンタルバックした野津田は、ユース時代からトップの試合に出場するなど将来を嘱望されていたが、2013年のトップ昇格後は力を発揮できずサブに甘んじていた。2016年にアルビレックス新潟に期限付き移籍すると、翌年には清水エスパルス、その年の途中には仙台へ。昨季もレンタルのまま、仙台でプレーを続けた。

 しかし、昨季の仙台では主軸としてシーズンを戦い抜き、天皇杯の準優勝にも貢献。約3年にわたる武者修行を経て、満を持して広島に復帰した。

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