湘南の梅崎司は若手に訴えた。
「恐れなくていい。勇気を持とう」 (2ページ目)
──ルヴァンカップで4強入りした時は、優勝を意識し始めていましたね。その柏との準決勝は合計3−3の撃ち合いのあと、PK戦に。3人目のキッカーとして梅崎選手は失敗してしまいましたが、その後に相手も外して勝利。あの時は感情が溢れていましたね。
「あれはこのシーズンを通して、一番のハイライトかなと、自分では思っていて。チームがすごく成長できた2試合だった。その前にミーティングがあって、曺さんのあとに自分が話す機会があったんですけど、そこで自分の思いを伝えたんです。もっとつなごう。恐れなくていい。クリアするだけでは、先に進めない。劣勢の時こそ、勇気を持とう。そんなことをみんなに言ったら、一気にガラっと変わったんです。
後ろの選手たちが、以前だったら簡単に弾いていたような場面でも、マイボールにしようとする。それもすぐにできたんです。それによって攻撃の回数も増えました。守備をしていても、一瞬の隙を窺うようになりましたね。そんなこともあった対戦の結末が、あのPKですから。自分が外したことによって、仲間との信頼関係がより強くなりました。ホントに、仲間に助けられているんだ、と強く感じられた瞬間でした」
──そしてルヴァンカップ決勝では、見事に1-0で勝利。古巣浦和の本拠地で、同じ神奈川のライバル横浜F・マリノスを破り、湘南ベルマーレとして初の主要タイトル獲得に貢献しました。あの時の心境を聞かせてください。そして湘南がカップ戦で優勝できた要因も。
「こんなチャンスは滅多にないと強く思っていました。プレーオフを勝ち抜いたところから、絶対に優勝するんだと思い続け、決勝への切符をつかんだ。ただ、もしかしたら、僕はチームメイトより緊張していたかもしれない。優勝を義務付けられたクラブ(浦和)でなかなかそれが達成できない経験もあったので、自分のタイトルへのこだわりはひと一倍強いと思います。
けど、周りの、とくに若い選手たちは、この大舞台を楽しもう、自分たちをしっかり表現しようとしていたんです。その意味で、やっぱりここでも仲間に助けられました。(湘南の)若い選手のエネルギーは本当にすごいです。あの決勝でも、もっと成長するんだ、もっと高いところへ行くんだ、というエネルギーに溢れていた。その点が、マリノスよりも強かったかなと思います」
──杉岡大暉選手のゴールは、まさにそれが表れていました。
「本当にそうです。怖いもの知らずで(笑)。でもそれでいいと思うんです。(20歳ぐらいの)あの時期って、無敵感があるじゃないですか。ミスしたり、負けたりすることもあるんですけど、コンチクショウ、もっとやってやるぞ、となる。それが続く限りは、突き詰めて勝負していったらいいと思う。自分もそれぐらいの(年齢)の頃はそうでした。このチームに入って、自分の言葉がどれぐらい響いたかはわからないですけど、若手がのびのびやれる空間をつくろうとしてきました」
──今の湘南の若手は、精神的にタフで、向こう意気の強い選手が多いみたいですね。
「とは言いつつも、やっぱりベルマーレの一員なので、(彼らは)まったく自分勝手ではないんです。自分を出すことを優先せず、まずはチーム。それがベースにありますね」
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