再びJ1残留争いを戦った磐田・山田大記は「涙が出そうになった」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 山田は真剣な顔で言った。
 
 彼自身、昨シーズン、ドイツから戻ってきてから「劣化した」と囁かれ、内心傷ついた。「こんなもんじゃない」と反発したい思いはあった。しかし、(3カ月無所属だった)コンディションの悪さやプレーリズムの変化で思うようにならず、もがいていた。

「ジュビロは、メンバー外になった選手も黙々とトレーニングしていて、チームのために戦うという選手ばかりなんです。だから、試合に出る選手は、彼らのためにもという覚悟は持っています。名波(浩)監督も『出ていないベテランの姿勢を見ろ』と言いますし、結果は出なかったかもしれないけど、そういう組織としての強さは感じていました」

 東京Vとの決戦を前に、「磐田は危ない」という噂が山田の耳に入ってきた。「チーム内に不和があるんじゃないか」と。しかし、山田には何のことだかわからなかった。チームとして結果が出ていないのは確かで、その理由はあるはずだったが、共闘の絆は固く結ばれていた。

「この仲間で強くなりたい、と思いますね」

 そう語る山田は、残留したことに甘んじてはいない。試合を決める。あらためてそういうプレーをしたいと考えているし、できる自信もある。10得点10アシスト。数字の目標も立てている。その先にある日本代表も、あきらめたわけではない。

「J1に残った日に意味があった、と実感したいですね。そのためには、まずは来年落ちたらダメ。組織としての土台はあるから、結果を出したい。名波監督に任せてもらえている分、選手たちでプレーを作っていきたいですね!」

 明るく語る山田は、プロに入って初めて、シーズンをケガなしで戦い切っている。

(つづく)

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