名波監督のマネジメント能力は特筆。
ジュビロに降格危機の焦りはなし (3ページ目)
こうして違和感を拭った磐田は、終了間際に途中出場の櫻内のゴールで追いつくと、土壇場で得たPKを同じく途中出場の小川航が沈めて、劇的なフィナーレを迎えている。
交代選手が結果を出したことはもちろんながら、戦況やアクシデントに応じてすぐさま修正できるのが、磐田の強みとなったのだ。
うまくいかなければすぐに切り替え、別の一手を打つ――。指揮官の潔さと決断力も、この日の勝利の要因だっただろう。
采配だけでなく、名波監督のマネジメント能力も特筆すべきものだ。残留争いに巻き込まれるなか、チームはネガティブな状況に陥りかねない。しかし、今の磐田にはそんな空気は微塵もないと、大井は明かす。
「僕は新潟にいたときにも残留争いを経験しましたが、危機感というものは新潟にいたときよりも全然ないですね。それは、名波さんがあえてそうさせないように、明るい雰囲気を作ってくれているから。たとえ悪い状況であっても、ネガティブな声かけは許さないですし、大丈夫といつも言い続けてくれる監督なので。
もしかしたら、もっと危機感を持ってやったほうがいいかもしれないけど、前向きにトライしていこうという感じなので、今はそういう雰囲気でできていると思います。自分たちは監督のことを信じてやっているので、名波さんのこのアプローチが正解だと証明できるように、残り3試合で表現できればいいかなと思います」
この日は大黒柱の中村俊輔が負傷離脱し、大久保嘉人も出場停止だった。苦しい台所事情のなか、配置を変え、手駒をやりくりし、最大限の力を発揮させる。スタメンに抜擢された20歳の大南拓磨は、この日がJ1での3試合目。土壇場でのPKのキッカーの大役を21歳の小川航に任せたのも、前向きなトライが許される雰囲気があるからだろう。小川航にとっては、これがJ1初ゴールだった。
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