バルサ化は1日にしてならず。ヴィッセルのリージョ革命は間に合うのか (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「70分ぐらいまでは、私たちがボールを支配することで、ゴールを守るということを達成できたと思う」

 リージョ監督が言うように、途中までは神戸がボールを支配する時間帯があったことはたしかだ。相手陣内でボールを支配することで、守備の時間をできるだけ減らしたい――。スペイン人指揮官の狙いは実に崇高(すうこう)であり、それができれば究極の戦術となるだろう。しかし、実質的にそれを体現しうる質が伴わない。

 奪った3得点も、オウンゴールと、ふたつのスーパーゴールである。オウンゴールに至った過程は連動性が備わっていたが、古橋と三田のゴールは、再現の難しい、いわば偶発的なもの。ウェリントンの強さや、イニエスタ、ポドルスキのうまさも光ったが、いずれも個の力を感じさせるもので、組織としての連動性という意味では、滞りなくボールがつながる川崎の足もとにも及ばなかった。

「相手ゴールの近くでボールを奪い返すためには、それなりの量のパスをつなぎ続ける必要があるのですが、それを達成するうえで、体力的にどうマネジメントするかということが難しかったと思います」(リージョ監督)

 たしかに後半の神戸は運動量が低下し、パスコースを作るための動きや、高い位置で奪い返すためのプレスの迫力を欠いた。体力だけなく、選手同士の距離感や判断の部分も含め、リージョ監督が求めるスタイルは、シーズン途中から対応するにはあまりにも難易度の高いサッカーと言えるだろう。

 就任発表からまだ1カ月、指揮を執り始めてまだ2試合。そのなかで、川崎に対して途中まで互角に渡り合ったのは悪くない。バルサは1日にしてならず――。神戸の"バルサ化"には、ある程度の時間が必要なのは間違いない。

 一方、神戸はこれで7試合未勝利となり、12位に転落。降格圏が背後に迫っており、残留争いも他人事ではなくなってきた。理想を求める作業をこなしながら、現実的には結果を出すことも求められる。時間がないと悠長なことを言っていられないのも事実だ。

 今季のJ1も残すところ4試合。リージョ革命のもたらす運命は、果たして......。

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