山本脩斗の鹿島加入時の逸話。「強化部も僕をよく知らなかったと思う」 (5ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 渡部 伸●写真 photo by watanabe shin

――結果を残せたことで、新しい環境に馴染めた部分もあったのではないですか?

「そうですね。チームにうまく入っていけたな、スムーズにいったというのは感じました。自分の性格を考えると、移籍したら最初は苦労するかもと思っていたので(笑)」

――ピッチ内外で、自信を手にできた3連勝だったんですね。

「確かにそうなんですが、選手としての自信は、ひとつ勝ったからといって、すぐに身につくものではないと思います。本当に少しずつ積み重なっていくものだから。ジュビロ時代は、なかなかコンスタントに試合に出られなくて、チャンスをもらってもそれを活かせなかった。それは自信なくプレーしていたからなんだなと、今は思っています。アントラーズへ来て、試合に出て、勝つことによって、いろんな自信が身についてきたんだと実感できるんです」

――自分を信じる力ということですね。

「試合に出たい、そのための準備を日々行っています。以前はそこでチャンスが来て、試合に出ても、自分の力を出しきれていないなという感じでした。自分のプレーに納得が出来ず、しかもチームとしても負けてしまう。やられたのは自分のところから......ということもありました。自信がないからミスをすると下を向いてしまい、またミスをする。ジュビロ時代はそういう選手だったから、監督から信頼も得られず、試合に出られなかったんです」

――そういう意味でも勝つことは、本当に大事ですね。たとえ、個人的には納得できないプレーでもチームが勝てば、その反省も前向きにできるだろうから。

「そうですね。そういう部分があるかもしれません」

――チームとして結果を残す、勝つことで、選手たちの成長を促し、自信をつけていくというのは、当たり前の話ですが、山本選手の話を聞くと、改めて「勝つことへこだわる重要性」を実感します。しかし、今季リーグ戦では苦戦が続きました。逆に「勝利へのこだわり」という哲学は、若い選手たちのプレッシャーになっているのでは? と感じる試合もあります。

「今季は得点した直後に失点してしまったり、開始直後や終了間際の失点も少なくありません。勝っているときというのは、完封で勝ちきるということが続くし、その積み重ねがあるから、自信も持てる。でも逆の状況だと、同じように失点してしまう。『失点なしで行くぞ』と思っていても、結果的にそういう空気が生まれてしまう部分があるのも事実だと思います。ひとつのプレーでの小さなミスや隙があれば、そこを突かれてしまう。そういう1プレーの甘さが、勝負を分けるのだと思います」

(つづく)

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る