鳥栖の現実は「残留ありき」。守備的な戦術にトーレスはイライラ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 そう洩らす鳥栖の選手たちの士気を高め、啓蒙していた。
 
 しかし、トーレス自身が持ち味を出し切っているとはいえない。8試合出場で1得点。世界を股にかけたストライカーとしては、なんとも寂しい数字だ。

 この夜、トーレスは鬱屈したフラストレーションを隠せなかった。戦術的に守備に軸を置いた両チーム同士の対戦ということもあって、パスがほとんど入らない。運動量も少なく、イライラだけが募っていった。
 
 その結果、トーレスはオフサイドの再開場所を巡って主審と口論に及んでいる。

「オフサイドなら、(FC東京の)自陣からリスタートすべきだった」

 トーレスは試合後のミックスゾーンで抗議しているが、2016年のルール改正(オフサイドは反則が起きた場所でリスタート)により、主審が、トーレスがボールを受けたタイミングを反則と捉えた場合(このケースは戻りオフサイドで、トーレスが自陣内に入ってボールを受けたところで反則がとられた)、そのジャッジはルール上、正しかった。執拗な抗議を続けたことで、トーレスはイエローカードを受けた。

「ボールが入らなかったし、(トーレスは)イライラしていましたね」

 ピッチで近くにいたFC東京のMF橋本拳人は振り返っている。

「(トーレスは)ボールの持ち出し方とかは、"おっ"という感じでしたが......。この試合だけだと、どんな選手なのかなと、あまりわからない印象でした。ポストがうまくて、ヘディングが強い選手なんですか? (前半に)足が少し入ってしまって、すぐに謝りましたけど、ふざけるなという感じでしたね(笑)。たぶん、フラストレーションがたまっていたんだと思います」

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