2018.08.29

イニエスタは周りの力を3割増しに。
そのすごさを神戸同僚が細かく説明

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by YUTAKA/AFLO SPORTS

 取材陣でごった返すミックスゾーンを、アンドレス・イニエスタがノーコメントで通り過ぎる。その横顔には、憂いが張り付いていた。

 横浜F・マリノス戦。イニエスタの所属するヴィッセル神戸は、本拠地ノエビアスタジアムで0-2と敗れている。結果に対する悔しさが少なからずあっただろうか。

 しかし、それだけではないようにも見えた。

「イニエスタは何を思うのだろうか? ランプに灯を点し、火を大きくしたが、肝心のFWがそれを消してしまった」

 試合を報じたスペインのスポーツ紙「as」は、そう批判的な見出しを打っている。イニエスタは失望を感じたのか?

横浜F・マリノス戦にフル出場したアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸) 8月26日、神戸は試合を通じて横浜FMを押し込んでいた。

 その攻撃の中心にいたのは、紛れもなく背番号8のイニエスタだった。ボールの受け方、置き方が寸分も狂わないことで、相手選手を間合いに飛び込ませない。キープ力があるという表現があるが、イニエスタはそれ以上で、「ボールを失わない」という領域に達している。だからこそ、味方は安心してパスをつけられるし、信じて走り出せる(さもなければ、ポジションを留守にできない)。必ずパスが出る、と信じて走るのだ。

 それは奇跡のような光景に映る。イニエスタの体つきは細身で、肉体的に傑出しているわけではない。にもかかわらず、乱戦を抜け出し、パスをつなぐことができるからだ。

 イニエスタはリカバリーやメンテナンスに関して専属トレーナーをつけているが、ジムトレーニングはほとんどしないという。「腹筋を数十回やる程度」とチームメイトは証言する。その足は白くほっそりとして、まるで女性のようだ。その白い足は、魔法の杖なのか――。