イニエスタは周りの力を3割増しに。そのすごさを神戸同僚が細かく説明 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by YUTAKA/AFLO SPORTS

 すると、今度は横浜FMのMF松原健にチャージを浴びたが、遠いところにボールを置いて飛び込ませない。さらに喜田に追いすがられるが、右からの強い寄せに対し、コマのようにクルッと回って、外へ力を逃がし、自らはケガをしないようにファウルにした。2人のJリーガーをまったく相手にしていなかった。

 イニエスタがピッチでもたらす感覚が、神戸の選手たちにカタルシスを与えているのは間違いない。

「ボールを触って、味方に渡して、パスコースを探し、パスを受け、触って、また味方に渡して......。自分はバルサで、そのカルチャーの中で育った。とにかく、それを繰り返し続けてきただけだよ」

 イニエスタはかつてその信条をこう語っているが、その反復で技術を高めてきた。基本はチームプレーなのだろう。周りを生かし、周りに生かされる。プレーの渦を創り出し、ひとりの力を20~30%増しにするイメージだ。

「自分のプレースタイルはあるはずだから、それを大事にしなさい」

 イニエスタはサッカー伝道師のようにそう言って、選手やスタッフにカタルシスを与えているという。選手個人レベルでは向上を促しており、すでにひとつの成功といえる。そこに希望が見える。

 その一方、神戸はチームとして、背番号8への依存度の高さを露呈している。横浜FM戦の失点シーンは象徴的だった。簡単にラインを破られているし、呼吸も合っていない。

 イニエスタが関わるときと、関わらないときで、プレーレベルは格段に違うのだ。

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