秋田豊が語る鹿島の紅白戦。「勢いある若手は、とことんぶっ叩く!」 (2ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko  井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

現役時のことを熱く語ってくれた秋田豊現役時のことを熱く語ってくれた秋田豊 今季開幕以降、リーグ戦13試合、ACL8試合、すべての試合に出場している鈴木が試合を振り返る。鬼門といわれたラウンド16の壁を突破するのは、簡単なことではなかった。過去、タフな戦いの前でプレッシャーにつぶされるように跪(ひざまず)き、敗れてきた。積み重ねた悔しさを経験という力に変えたからこそ、このタフなトーナメントを勝ち上がれた。しかし、まだひとつだけだ。新しい歴史を刻むためには、まだ足りない。

「おめでとうございますとは、違う。勝てなかったのもあるけれど、まだベスト8が決まっただけだから」

 植田直通は淡々とそう語り、「(リーグ戦の)仙台戦に勝たなくては、意味がない」と言い切った。

*     *     *

 勝ち切る――。

 鹿島アントラーズの哲学とは、勝つことへの執着心だ。それを体現したレジェンドたちのなかでも、長くセンターバックを務めた秋田豊は、クラブにひとつの選手モデルを残した。アントラーズのセンターバックは弱い気持ちを微塵も見せてはならない。強いヘディングは攻守において、チームの勝利に貢献した。

――鹿島アントラーズで数々のタイトルを手にされてきましたが、もっとも強いチームはどのチームでしたか?

「3連覇のオズワルド・オリベイラ時代も強かったけれど、僕はすでに移籍していましたから(笑)。実は三冠を達成した2000年はそれほど強かったという印象はないんです。やっぱり、1997年のチームですね。一番強かった。あのチームは"スーパー"でしたよ。

 だって、ジョルジーニョがいて、ビスマルクがいて、本田(泰人)さんもすごかった。守っていても、相手のフォワードにクサビが入ることもまったくなかったんですから。中盤のポジショニングで、相手のパスを誘発して、ボールを奪うんです。見事でしたよ。見ている人からしたら、『守備はラクだろう』って(笑)」

――攻撃も迫力がありました。

「そうですね。選手個々が際立っていました。そのうえで、誰もがチームのために闘っていた。自分のタスクを果たすことに力を尽くしていましたから。自分のストロングポイントを理解し、それを発揮する。同時にチームメイトの強さや弱みを理解し合っていたので、カバーし合える。チームとしての完成度、そしてバランスがメチャクチャよかった」

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