秋田豊が語る鹿島の紅白戦。「勢いある若手は、とことんぶっ叩く!」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko  井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

遺伝子 ~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(13) 
秋田 豊 前編

本田泰人の証言から読む>>

 5月16日、中国・上海スタジアム。試合終了を告げる笛が鳴ると、両チームの選手たちがピッチに立ち尽くす。腰を下ろし、座り込む選手も少なくなかった。誰もが限界まで戦った証しだ。ACLラウンド16セカンドレグ、上海上港vs鹿島戦は2-1で上海上港が勝利したが、ファーストレグを3-1で勝利していた鹿島のベスト8進出が決まった。

「第1戦にフッキが出ていなくて、そこはツイていた」

 ユニホームが汗で身体に張りつくほど、90分間攻守に走り続けた鈴木優磨が言う。右足の負傷で第1戦を欠場したフッキ、オスカルの強力ブラジル人が織りなす攻撃は抜群の破壊力を持っている。

「パワープレーもあるし、サイドからも崩してくる。深くまでえぐってくるときもあれば、深くまでえぐってマイナスとか......本当にいろんな攻撃をしかけてきた」

 そう語る昌子源は、前半7分に先制点を許したあと、落ち着いていられたことが重要だったとも話した。

「相手も相手だったので、この1点は仕方がない。俺らはまだ勝っていると落ち着いていた。右サイドを中心に落ち着いて回し、そこから決定機が作れたので、そこで点が取れればラクだった」

 42分に土居聖真が同点弾。1-1で迎えた後半は、上海上港の攻撃を鹿島がしのぐという時間が続いた。ゴールキーパーのクォン・スンテのビッグセーブに何度も救われる。

 後半34分、ペナルティエリア内での昌子のハンドでPKを与えてしまい(ちなみにボールは手ではなく、頭に当たっている)、フッキがそれを決めて、2-1となる。さらに上海上港は猛攻を続けたが、鹿島がなんとか抑え、試合が終わった。

「今日は別に、いいゲームをしようとか思っていなかったので。ここ(ラウンド16)を突破するという、みんなの強い意志が出たと思います。いいゲームかって言われたら、疑問がありますけど。足をつろうが、動けなくなろうが、今日の試合はそれでもいいと思っていた。最後はなんとか失点しないように前へ出たり、裏へ抜けたり、わずかでもプレスをかけて、相手が蹴りづらいようにしたり......。でも、やっぱり俺は前線の選手なんで、点を取りたかったです。とりあえず、突破が決まって、今は非常に嬉しく思っています」

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