トンデモ暴力事件の陰で、名波ジュビロは理想的なサッカーをしていた (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 そして37分に、高い位置でのボール奪取からカウンターを仕掛け、MF山田大記のクロスをMF松浦拓弥が合わせて先制点を奪うと、42分にもふたたびカウンターを発動させ、右サイドを駆け合ったDF小川大貴のシュートのこぼれた球をMF田口泰士が押し込んで2−0。

 後半立ち上がりはやや横浜FMにペースを譲ったが、58分に三度、高い位置でのボール奪取を実現し、田口が飛び出していたGK飯倉大樹の頭上を抜くロングシュートを沈め、試合を決定づけた。74分にPKのこぼれ球を押し込まれて1点を返されたものの、アウェーで3−1と快勝を収めた磐田が3試合ぶりに勝ち点3を手に入れた。

 高いラインを保ち、リスクを負った攻撃を仕掛けてくる横浜FMに対し、ソリッドな守備で流れを掌握する。磐田にとってはまさに"ハマった"試合だった。

「『分析がハマりましたね?』というクエスチョンを皆さん(記者)はしたいと思うんですが、実際には1日しかトレーニングする日はありませんでした」

 名波監督が振り返るように、前節から中3日の一戦であり、相手を分析する時間は限られていた。そのなかで特殊なサッカーを展開する横浜FMに対策を施すのではなく、これまでの積み上げを体現しただけである。そう指揮官は主張する。

「日本のチーム、特にタレントが揃っているチームは、前後の出し入れからゲームを組み立てて、相手の弱いところにボールを刺していく。それから、オープンなスペースにボールを運び、最後は個の突破であったり、コンビネーションで崩していく。そして、クロスやマイナスのボールからアイデアを出していく。そういった常が、今のJリーグにはある」

 その分析を踏まえたうえで、「それをケアしていくための守備を4シーズン以上やり続けた結果が、今日のゲームになったと思う」と、継続の成果であることを強調した。

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