フリューゲルス消滅、アツは「天皇杯で優勝すれば...」と奇跡を信じた (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「この頃が一番しんどかった。なかなか思うように練習ができず、その後は署名活動をしていて、毎日が忙しく過ぎていった。同時に、吸収合併の話は静かに進んでいっていたからね。

 夜、駅前に立って、いろいろな人に声をかけて署名をしてもらうんですけど、正直『これをやって意味があるのかな』って思ったときもあった。どのくらい署名を集めたらいいのか、実際に署名が集まったところで、本当に吸収合併の話をひっくり返すことができるのかなって。人間って、弱いからね」

 11月7日、ホーム最終戦となるアビスパ福岡戦。選手たちは、ユニホームの左肩にある『ANA』のロゴを手で隠して入場した。選手はもちろん、サポーターやファン不在で合併を決めた全日空への抗議と反抗だった。

 試合終了後には、ゲルト・エンゲルス監督が挨拶の際に「誰でもいい。助けてくれ」と、涙を流してチームの救済を訴えた。

 同日、『横浜フリューゲルスを存続させる会』がクラブ事務所で全日空と交渉したが、全日空側から横浜マリノスへの吸収合併撤回の意思がないこと、チーム名を「横浜F・マリノス」とすることが改めて伝えられた。

 リーグ戦最終戦(11月14日)となるコンサドーレ札幌戦も4-1と勝利。「チーム消滅」報道が流れてから、フリューゲルスは4連勝を飾って、セカンドステージを7位で終えた。

 2日後、前田選手会長ら4名の選手がJリーグを訪問。川淵三郎チェアマンらと吸収合併の白紙撤回について交渉を行なったが、およそ80分間の会談も特に進展しないまま終わった。

『横浜フリューゲルスを存続させる会』は、30万人を超える署名を集めて全日空に提出。そこで、全日空は「(吸収合併について)再度検討して11月24日までに回答する」とした。

 さらに、フリューゲルスとマリノスの両サポーターの有志が横浜市役所を訪れて、吸収合併撤回への支援をお願いした。

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