曽ヶ端準「ヘタでも、チームを勝たせられる選手なら使うでしょ?」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 五十嵐和博●撮影 photo by Igarashi Kazuhiro

遺伝子 ~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(6) 
曽ヶ端準 後編

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 2月21日のACL水原三星戦で、久しぶりに公式戦のゴールマウスに立ったクォン・スンテは、PK阻止という大仕事をやってのけ、勝利に貢献した安堵感に包まれていた。

 韓国代表ゴールキーパーとして2017年に鹿島アントラーズに加入。クラブ史上初となる外国人ゴールキーパーだった。しかし、その年の7月に左指を痛めると、そこから試合出場機会を失うことになる。

「誰もが試合に出たいと思っている。でも、僕からソガさんに何かを言うことなんてないですよ(笑)」

 スンテは敬愛の念に溢れた表情でそう語り、目を細めた。
 
鹿島で21年目のシーズンを迎えた曽ヶ端準鹿島で21年目のシーズンを迎えた曽ヶ端準 他のポジションと違い、ライバルと近い距離でトレーニングを行ない、ひとつの椅子を競い合うゴールキーパー。長らく正GKの座を守り続けてきた曽ヶ端準(そがはた ひとし)とて、その場所に安住できるわけじゃない。

 スンテの加入はそれくらい大きなインパクトがあった。しかし曽ヶ端は、ライバルの負傷によって得たスタメン出場のチャンスを活かし、ポジションを奪い返した。ケガから復帰したスンテをベンチに座らせたまま、正GKとして活躍を続けたのだ。

***

――これまでもさまざまなライバルがいたわけですが、スンテ選手の加入は新たな危機感を与えたのではないでしょうか? そもそも補強というのは、現状に満足していないというクラブからのメッセージでもあるわけですが。

「特別に何かを思うことはありませんでしたね。過去にも櫛引(政敏/モンテディオ山形)をはじめ、いい選手が加入してきましたから。現役の韓国代表というのは過去になかったですけど。そして、『ベンチでいいや』なんて気持ちで移籍してくる選手はいませんからね」

――誰もが、曽ヶ端選手の座を脅(おびや)かすことを考えていたと。

「当然でしょう。だから僕も、そういう選手との競争だということは自覚していますし、覚悟している。でも、こういう厳しい競争がある環境が僕には合っています」

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