死の淵からよみがえったラモス瑠偉が、日本ビーチサッカーに魂を注入 (3ページ目)

  • 小崎仁久●文 text by Kosaki Yoshihisa
  • photo by Getty Images

 さすがに現役の、しかもJリーグのシンボルとも言っていい選手の合流は難しいだろうが、ラモス監督は「内緒で考えていることもある」とも明かしている。過去には、元日本代表の前園真聖氏を2009年のW杯メンバーとして選出した経緯もあるだけに、現役を退いた大物の思わぬカムバックがあるかもしれない。

 こういった大胆な考えを口にすることについては、「ビーチサッカー全体を盛り上げていきたい」という思いもあるに違いない。

 日本が世界どころかアジアでも後れを取り始めているのは、プレー環境の差も影響しているだろう。日本でもチームは増えており、試合や大会も増加傾向にはあるが、ビーチサッカーコートをはじめとした施設はまだ少ない。

 一方、イランやUAEなどの国では施設が充実し、十分な練習時間を取ることができるうえ、金銭面での選手の待遇も日本とは大きな差がある。さらに、中東地域はビーチサッカーの強豪国が多いヨーロッパに近く、ヨーロッパ各国とのフレンドリーマッチやリーグへの参加がしやすいという利点もある。

 その差を埋めるために、ラモス監督が求めるのは単なる勝利ではない。

「日本のビーチサッカーを何とかしないといけない。ワールドカップに出ても、その後にビーチがなくなってしまうようなことになってはダメ。もっとビーチサッカーに興味を持てるよう、若い世代のために環境を作っていくのが僕の仕事だと思っている」

 サッカー王国・ブラジルではビーチサッカーの人気も非常に高い。かつてはロマーリオが代表でプレーするなど、7万人もの観客が集まるゲームもある。特に、ラモス監督の故郷であるリオデジャネイロはビーチサッカー発祥の地であり、有名なコパカバーナ・ビーチでは、多くの市民が毎日のようにプレーを楽しんでいる。

 ラモス監督の「ビーチサッカーを愛している」という言葉には、我々が思っている以上に熱がこもっている。3月中旬の沖縄合宿で始動した"ラモスジャパン"は、指揮官の熱き思いに応え、来年3月に行なわれるアジア選手権を勝ち抜けるのか。日本ビーチサッカーの未来は、「ビーチが似合う男」を自称する新監督の手に委ねられた。

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