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ピクシーのイライラが消えた。
ベンゲルがタクトを振り、選手が応える (4ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 2トップが2人ともゴール前から離れることもあったが、それでもグランパスの攻撃は機能した。ストイコビッチと小倉が空けた前線のスペースに、平野孝や岡山、フランク・デュリックスといった2列目、3列目の選手たちが飛び出していったからだ。

「ベンゲルのサッカーはワンタッチ、ツータッチでボールをテンポよく動かしながら、空いたスペースを次々と使うから、やっていて気持ちがよかった。流れに乗せてもらっている感じですね。練習中からワンタッチポゼッションとか、2タッチ以下でやるので、次の展開を常に考えることが脳や体に染みついていったんです」

 小倉は、「俺の練習を100%の力でやればうまくなる」というベンゲルの言葉を噛み締めていた。

 ニコスステージの序盤で、よどみなく流れる攻撃を象徴する出来事が起きる。

前年まで1ゴールのみの中西哲生が、1995年は6ゴールを決めた photo by AFLO前年まで1ゴールのみの中西哲生が、1995年は6ゴールを決めた photo by AFLO 開幕戦でジュビロ磐田を4-0で下したグランパスは、第2節のジェフユナイテッド市原戦、第3節のガンバ大阪戦、第4節の鹿島アントラーズ戦にも勝利して4連勝を達成したが、第2節から中西が3試合連続ゴールを決めるのだ。

 3戦連発ということ自体が素晴らしい結果だが、この一連のゴールが大きな価値を持つのは、いずれも中西が途中出場でゴールを奪っていることだった。しかも、中西はもともとボランチを本職とする守備的な選手で、スーパーサブを務められるようなタイプではなかった。実は、中西は過去2シーズンのリーグ戦で1ゴールしか奪えていなかったのだ。

「それまで哲生さんはバックパスばかりする選手だった。それが3試合連続でゴールを決めるなんて」と、平野も苦笑する。

 そんな選手がなぜ、3試合連続ゴールを奪えたのか――。中西自身が解説する。

「『Pass should be future , not past , not present.』ですよ。僕が思い切ってピクシーや小倉を追い越してゴール前に飛び込むと、そこに必ずボールが出てきたんです」

(つづく)

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