ピクシーのイライラが消えた。ベンゲルがタクトを振り、選手が応える (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 7月12日の第23節は、7連勝中の名古屋グランパスと8連勝中のヴェルディ川崎の対戦だった。

 ストイコビッチにボールを集め、押し気味にゲームを進めていたグランパスだが、前半31分に思わぬアクシデントに見舞われる。ヴェルディのオフサイドが見逃されたことで、アーセン・ベンゲルとコーチのボロ・プリモラツがベンチを飛び出して抗議すると、プリモラツに退席処分が下されたのだ。さらにハーフタイムには、暴言を吐いたという理由でベンチの中西哲生までもが退場処分になった。

 それだけではない。前半44分に飯島寿久、ハーフタイムにストイコビッチ、後半25分にはトーレスにイエローカードが提示され、累積警告によって彼らの次節出場停止が決まったうえに、この試合を1-2で落としてしまうのだ。

 連勝がストップし、飯島、ストイコビッチ、トーレス、中西の4人が出場停止――。

 だが、この危機的状況を、グランパスは軽々と乗り越えていく。第24節の横浜フリューゲルス戦では、若手の喜名哲裕を右サイドハーフに、谷口圭を右サイドバックに抜擢し、デュリックスと森山泰行のゴールで2-1と勝利。続けてジェフ市原、ガンバ大阪からも白星を奪って3連勝を飾ったグランパスは、サントリーシリーズ(第1ステージ)を15勝11敗の4位で終えた。

 もう彼らを「Jリーグのお荷物」と呼ぶ者はいなかった。グランパスは万年下位から脱却し、強豪の仲間入りを果たしたのである。

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