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ベンゲルに挨拶に来たジョージ・ウェア。
グランパスの選手は仰天した (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 温厚なジェントルマンという印象の強いベンゲルだが、この鹿島戦のように激情家の一面を見せることもあった。特に、当時21歳の小倉隆史は、1歳下の平野孝と並んでベンゲルからよく怒られたという。

「めちゃくちゃ怖かったですよ。練習中も怒られたし、ハーフタイムや試合後にもよく怒鳴られた。『お前、猫じゃねえんだ、虎になれ』と怒鳴られたし、右からのクロスに合わせる練習で、左足のアウトサイドで決めたら、『カッコつけてんじゃねえ、ちゃんと右足で蹴れ、バカヤロウ』って。決めてるじゃん、と思いましたけどね」

 小倉が苦笑しながら振り返る。

「あれは、95年のシーズン序盤の試合当日だったと思う。泊まっていたホテルで監督の部屋に呼び出されて、ベンゲルからいきなり『お前、サッカーを教えてほしいのか』と言われたんです。それで、もちろんです、と答えたら、『なんで100%の力で練習していないやつに教えなきゃいけないんだ。100%でやれ』とすごまれて。『俺の練習を100%でやれ。そうしたら、お前はもっとうまくなる』と言われて、ドキッとしましたよ。俺の甘い部分を見抜いていたんだと思うし、100%でやればうまくなると言い切れるところもすごいなと。一方で、『俺はお前のプレーが好きだ』と評価してくれてもいた」

 4月26日の第12節・ヴェルディ川崎戦は4-3と勝利したが、第13節の横浜フリューゲルス戦は3-4で敗戦。第14節のセレッソ大阪戦では6-0の大勝を飾ったものの、第15節のジュビロ磐田戦は0-1で惜敗するといったように、試合内容は向上して勝ち点3を奪えるようにもなっていたが、勝利と敗北を繰り返し、なかなか安定しなかった。

 季節が初夏へと移った5月13日、国立競技場で行なわれた第16節の浦和レッズ戦は、第4節に続いてPK戦へともつれ込み、勝利した。ここでJリーグは約1カ月の中断に入った。日本代表がイングランド遠征を行なうためである。この時点でグランパスは6勝10敗、14チーム中12位だった。

自らが先頭に立ち、グランパスの選手とともにランニングするベンゲル photo by Getty Images自らが先頭に立ち、グランパスの選手とともにランニングするベンゲル photo by Getty Images

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