福田正博の心に残るもの。「世界で一番悲しいゴール」を決めた後で... (2ページ目)
しかし、試合が終わったわけではなかった。すでにJ2降格が決まったにもかかわらず、Vゴール方式による延長戦を戦わなければいけなかった。残酷な宣告を受けたばかりの選手たちにとって、それはどれほど過酷なことだったのだろう......。
福田は当時のことを回想し、顔をゆがめた。
「延長戦はつらかった......。ルールだから(ピッチに)出ていったけど、もうみんなの気持ちも、チームもバラバラだった。
広島だって、何のために戦っているのかわかっていなかったと思うよ。俺は、ただただ『(試合を)早く終わらせたい』と思っていた。もう、この雰囲気の中でサッカーをしたくなかったから。『この試合に勝って終わることに意味がある』という人がいたけど、俺らの戦いはそういう戦いじゃない。残留か、降格かをかけた試合だった。だから、降格が決まった時点で、俺には(この試合で)勝つことも、負けることも、意味がまったくなくなってしまった」
気持ちが入らない試合は、早く終わるどころか、逆にゲームが動かなくなっていた。まるで浦和への罰ゲームのように、サッカーの神様は容易に試合を終わらせようとはしなかったのだ。ただ、サポーターの熱のこもった応援だけがスタジアム中に響き渡っていた。
延長後半1分。小野伸二のショートコーナーから、ペトロビッチが中央へクロスを入れた。そのボールに、福田は何も考えずに飛び込んだ。そして、右足のインサイドでゴールを決めた。
シーズン13点目の、喜びも感動もない"世界一悲しいゴール"だった。
すべてが終わったと思った瞬間、ゴールを決めた福田に抱きつく選手がいた。DFの池田学だった。
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