名波監督も「すごいやつだ」と驚嘆。
ジュビロを変えた中村俊輔の存在 (5ページ目)
中村俊輔の存在なくして、ジュビロの躍進は語れない――やはり中村俊輔という存在は、クラブにとって大きかったですか。
「そこは、でかいでしょ。俊輔は2016年のリーグ戦出場が19試合で、その前年も19試合だった。高齢の選手としては決して悪い数字ではないと思いますけど、本人にとっては、決して納得のいく試合数ではなかったはず。
だから、加入したときの会見で『28試合出てくれればいい』と話したんですけど、内心は『25試合くらいかな』と思っていた。そうしたら、結果的にはリーグ戦で30試合、天皇杯も含めれば31試合も出場した。それは、かなり大きいですよね。
少しパフォーマンスが落ちた時期もありましたけど、そこからまた盛り返してきた。大したものだと思います。
俊輔の何がすごいか。例えば、最終節の鹿島戦でのこと。彼は前半27分に得たFKを外したんですけど、試合後、『名波さん、すみませんでした』と言ってきた。それで『えっ、どうした?』と聞いたら、『あのFK、ちょっと(雰囲気に)飲まれて、自分らしくなかった』って言うんですよ。
でも、こっちとしてはミスとも思っていないし、『いいよ、また来年につながるんじゃないか、その悔しさが』と言って、笑い話で終わらせたんです。そうしたら、このあとがびっくりですよ。
翌日の朝8時に練習場でボールを蹴っているやつがいるって聞いて、それが俊輔だったんです。もうオフですよ。シーズンが終わっているのに、スパイクを履いてFKの練習をしていた。
悔しいけど、これは美談でも何でもなくて、実話。『すごいやつだな』って改めて思いましたね」
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