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川崎Fの歴史は、中村憲剛の歴史。
いま感じる「やっぱ優勝はいいな」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 J2からプロのキャリアをスタートさせた中村も、14年目の昨季には、Jリーグの年間MVPに選出された。彼が川崎の顔であることは今さら言うまでもないが、ガンバ大阪の遠藤、鹿島の小笠原らと並び、すでにJリーグの顔と呼ぶべき存在にまでなっている。

 ところが、中村と同様にMVP受賞経験を持つ遠藤や小笠原が、すでにいくつもの優勝を経験している一方で、中村だけはずっと無冠が続いていた。

 J1だけでなく、ルヴァンカップや天皇杯も含め、手にするのは銀メダルばかり。チーム最年長のMFは、「自分が一番長くいて、これだけ(2位が)続くと、自分が原因なんじゃないかとも思った」と、悩める日々を振り返った。

 だが、"シルバーコレクター"なるありがたくない称号も、裏を返せば、川崎がコンスタントに好成績を残した結果である。そして、それを残せたのは、川崎に中村という稀代のパサーがいたからだ。

 話は成績だけにとどまらない。フロンターレというクラブが地元に愛され、ホームゲームでは2万人を超える観客数が珍しくなくなったのも、中村の存在抜きには語れないだろう。

 J2からスタートし、J1の頂点を極めた川崎と、無名の大学生から、JリーグMVPまで上り詰めた中村。この15年間の両者の成長曲線は、きれいに重なる。川崎の歴史は中村の歴史であり、中村の歴史は川崎の歴史であると言っても大袈裟ではない。

 実際、前身の富士通時代を除けば、川崎フロンターレとしてのクラブの歴史は21年。今年が15年目の中村は、そのほとんどを知ることになる。Jリーグ広しといえども、そんな選手は珍しい。

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