中村憲剛から小林悠へ。抱き合う新旧キャプテンだけが知る大切なもの (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「本人はどう思っているかわからないですけど、少し気負っているような感じはありますよね。もう少し、楽しんでプレーできればいいと思うんですけどね。ただ、今の悠にそれを言っても、なかなか難しいとも思うんです。意外と(自分の話を)聞くかもしれないですけど、今、話しても、ちょっと背負い込みすぎていると思うから」

 直接、それを本人に伝えないのは、決して突き放していたからではない。本人に余裕がなければ、アドバイスをしたとしても、決して心には響かない。中村自身もキャプテンとしての重責を痛いほど知っているからこそ、静観していたのである。だから、中村はこうも言っていた。

「1トップで、エースストライカーで、かつキャプテンになって、両方をやらなきゃいけないというのはありますけど、そこは別に今までどおりでいいんですよね。キャプテンになったからといって、がんばりすぎる必要はないし、そこに目が行きすぎる必要もない。自分のフィニッシュワークのところで、もっとリラックスしてもらえたらと思う。ただ、その難しさもわかりますし、感じもするので」

 小林がその苦しみから抜けるキッカケとなったのは、奇しくも6月中旬に行なった本誌のインタビューだったという。同席していたカメラマンと、「得点することで引っ張っていくキャプテンがいてもいいのではないか」と話したことで、彼はキャプテンという責任を背負うのではなく、ストライカーとして得点を決めることで、チームを牽引していく覚悟を決めた。

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