アントラーズ、よもやのV逸。「王者のメンタリティ」が最後に仇となる (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 前節の柏戦も同様だった。左サイドを有効に活用できないことと、試合を押している割に、真の決定的なチャンスが作れない理由とは密接に関係していた。そこをどう立て直すか。それこそが最終節最大の見どころであり、優勝の行方を占うポイントだと見ていたが、鹿島に改善の跡は見られなかった。

 後半に突入すると、予想通り鹿島は押し返した。自慢のプレッシングが決まり始め、ボールを奪い返す局面がグッとよくなった。レアンドロが内に入る傾向は相変わらずだったが、左サイドの問題は2トップの一角を占める金崎夢生がそこに流れることで、6割方解消された。

 後半3分には右サイドバック伊東幸敏がGKと1対1になる絶好のシュートチャンスを掴む。後半7分にも金崎がゴール前で大きなチャンスを迎えた。いずれもサイド攻撃から生まれた産物である。

 この時点で優勝に迫っていたのは川崎。だが、追いかける側に回っていた鹿島が磐田からボールを奪うや、そのたびにスタジアムは緊張感に包まれた。1点決まれば、川崎と鹿島の関係は逆転する。目の前で劇的なゴールを目撃することができるのか。長いリーグ戦の結末としては、滅多に味わうことのできないスリリングな展開だ。試合のエンタメ性は、最高潮に達していた。

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