川崎Fを優勝に導いた小林悠が「あれが転機」という深いインタビュー

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 今季のJ1リーグは、最終節に大宮アルディージャを5−0で下した川崎フロンターレが、ジュビロ磐田とスコアレスドローに終わった鹿島アントラーズを得失点差で上回り、まさに劇的というにふさわしい逆転優勝を飾った。これまで幾度となくタイトルに手をかけながら、ことごとくチャンスを逸して「シルバーコレクター」「万年2位」といわれてきた川崎Fにとって、まさに悲願が成就した瞬間だった。

 この日のドラマチックな試合のなかで、3得点を挙げ、優勝の機運を大きく引き寄せたのが川崎FのFW小林悠だ。涙と笑顔の入り交じる歓喜のセレモニーを終えてメディアの取材に応じた小林悠はそのなかで、今季の「ターニングポイント」として、あるインタビュー取材について言及した。

 今季から任されたキャプテンの重責と、エースストライカーとしての得点への渇望──。取材者とのやり取りを通じて、その葛藤にひとつの解を示し、最終的にJ1リーグ得点王となるきっかけともなったSportivaのインタビューを、ここに改めて紹介したい。

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川崎フロンターレ・小林悠インタビュー(後編)

 川崎フロンターレの小林悠は、寝室の扉の内側に目標を書き記した紙を貼っている。その場所を選んだのは、起床とともに毎朝必ず見ることで、より強く意識できるからだという。

 2017年になって、新たに書き直した紙は全部で3枚。うち2枚には「タイトル」と「全試合出場」の言葉が綴られている──。

点を取ることへのこだわりは以前と変わらない小林悠点を取ることへのこだわりは以前と変わらない小林悠

 今季から指揮官が鬼木達監督となって、キャプテンを任されるようになった小林に、チームの何が変わったのかを聞けば、こう答えてくれた。

「昨季までは攻撃のところに特化していて、その分というわけではないですけど、やっぱり簡単な失点というか、チームとしてオーガナイズできていれば防げた失点というのがあった。オニさん(鬼木監督)は、その隙を出させないというか、攻撃しているときもリスク管理をするとか、攻撃している中でも守備時のマークを確認させるなど、守備の意識を徹底してくれている。

 今まではどちらかというと常にイケイケな感じでしたけど、今季は(谷口)彰悟とか(大島)僚太が、しっかりバランスを取ってくれている。チームとしても、勝つために今、攻撃に打って出ていいのか、それともボールを大事にしたほうがいいのか、というアンテナを張れるようになった」

 今季の川崎には手堅さがあり、試合巧者のようにすら見えるのはそのためだろう。今年の1月1日、天皇杯決勝で敗れて、その悔しさから小林は勝つことにこだわるようになった。「たとえオウンゴールで勝っても、勝ちは勝ち。勝ち点3がプラスできるならば最高にうれしいし、それでいいとすら思えるようになった」とまで言う彼の姿勢は、確実にチームにも伝播している。

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