広島・森保監督の退任に思う。クラブはビジョンを見失っていないか (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「結果が出ないプレッシャーからか、選手たちの身体がまるで固まっているみたいな状態で試合に入っている。だから1失点して、ようやく目が覚めたように我を取り戻す」

 球際の強さ、ハードワーク、そしてチームのために戦う犠牲心こそが、広島にとって最大の特長だったが、その強みすら欠けているように感じられた。結局、戦い方に関しても、体調不良から復帰して間もなく、ベストコンディションではないMF森﨑和幸に頼ることになった。それが奏功して、第12節のヴァンフォーレ甲府戦で6試合ぶりの勝利(2-1)を挙げたが、"ピッチの指揮官"がふたたび戦列を離れると、また試合をコントロールできなくなった。

 選手起用に関しても、疑問符がつく。ゴールという結果を残せずにいたFW工藤壮人やFWアンデルソン・ロペスをはじめとするメンバーを森保監督は起用し続けた。久々に勝利した甲府戦で、ようやく1トップにFW皆川佑介を抜擢したが、無得点のまま6試合も引っ張った。

 その皆川にしても、アンデルソン・ロペスにしても、森保監督が指揮する最後の浦和レッズ戦でようやく得点したのだから、皮肉めいているとしか言いようがない。その浦和戦はGKに中林洋次、ボランチにMF茶島雄介、シャドーにMF森島司を起用するなど大幅にメンバーを変更したが、リードを奪いながら3-4で敗れた戦い方に、かつての面影はなかった。

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