広島・森保監督の退任に思う。
クラブはビジョンを見失っていないか

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 蝕(むしば)まれるように、不振の兆候は少しずつ、少しずつ見られていた。指揮官はその流れに抗(あらが)おうとしてきたが、チームを率いて6年目となった今季、大きく狂った歯車をもとに戻すことはできなかった。

最後の試合となった浦和戦。森保監督は森﨑和幸をピッチに送り出した最後の試合となった浦和戦。森保監督は森﨑和幸をピッチに送り出した 7月4日、サンフレッチェ広島森保一監督の退任を発表した。シーズンの折り返しに当たる17試合を終えて、2勝4分11敗の17位。降格圏に苦しむ現状を考えれば、クラブに3度のJ1優勝をもたらした功労者とはいえ、やむを得ない決断だったと言えるだろう。森保監督はクラブを通じて、こうコメントを残している。

「プロは結果がすべての世界。皆さまに喜んでいただけるような結果を残すことができず、申し訳ありません」

 常々「批判されるのは選手ではなく、監督である自分」と語っていただけに、今季について触れれば、森保監督自身もその采配がぶれた。シーズン開幕前は、これまで築いてきた最終ラインから丁寧にパスをつないでボールを保持するサッカーからの脱却に着手。前線から積極的なプレスをかけ、高い位置でボールを奪取し、素早く攻撃に転じるサッカーへのバージョンアップを図ろうとした。ところが、開幕戦から勝ち星に見放され、第2節からは4連敗を喫してしまう。

1 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る