アントラーズの快進撃はなぜ起きたのか。小笠原満男がその過程を語る (4ページ目)

  • 佐野美樹●取材・文・撮影 text&photo by Sano Miki

「(タイトルを獲得して)一番よかったのは、"勝つ雰囲気"を味わえたことですよね。ファーストステージを獲って、セカンドステージはアップダウンを繰り返しながら、最後は4連敗して。その間に、やっぱりすごくチームの中でもいろいろとあったりしましたからね。石井(正忠)さんがこう......体調不良で指揮を執ることができなくなったり、選手同士の言い合いが増えたり、試合に出られなくなった選手が不満をためたり。やっぱり勝てないときって、そういうとき。

 でも、リーグ戦を終えて、そのあとの大会で連勝しているときは、そういうことは一切なかった。誰もが『チームのために戦うんだ』っていう気持ちが前面に出ていたし、本当にみんながそう思っていた。試合に出ているとか、出ていないとか関係ない、ひとつになってやろうと。それは選手も、スタッフも、サポーターもそう。勝利のためにまとまっていた。

 その"いいとき"と"悪いとき"の両方の雰囲気というか、空気感を全員が味わえたことは、よかったなと思います。どういうときに勝って、どういうときに勝てないのか。タイトルを獲るっていうことが、どういうものなのかを味わえた。こればっかりは、口でいくら言っても伝わりにくいし、難しいですから」

 小笠原は以前から、「若いヤツらにタイトルを獲らせたい」と常々口にしていた。タイトルを獲ることで、感じることや見えてくる景色が変わるから、それを早く経験させてあげたいと。2015年シーズン、アントラーズはナビスコ杯(現YBCルヴァン杯)を制しているが、リーグ戦のそれとはやはり重みが違ってくる。リーグを制することで、小笠原が見てほしかった景色を、ようやく後輩たちと共有することができる、ということなのだろう。

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