震災を乗り越えて。ロアッソ熊本の
選手が集う店は「実家にいる気分」 (3ページ目)
しかし、甘い夢を見られる状況ではなかった。本拠地である、うまかな・よかなスタジアムは救援物資分配の拠点となり、自衛隊が駐屯。ホーム開催が可能になったのは、7月になってからだった。選手たちは余震のせいで眠りが浅く、心理的にも追い込まれた。トレーニングはままならず、地震による試合延期で未消化になった過密日程を戦わざるを得なかった。そのしわ寄せで、夏には5連敗。それでも心を折らずに戦い続けた。
「おばちゃんも元気を出さなきゃ!」
『グルメ』のおばさんは、朗らかな笑顔を作った。店はどうにか営業できるようになったが、自宅は大きな被害を受けた。店を畳もうか、とも悩んだが、"こんなときこそ"と続ける道を選択したという。
おばさんも「肥後もっこす」なのだろう。肥後もっこすは熊本人の気質である「強情」と「反骨」を言う。強がりで頑固で頑張り屋さんで、他人にはとことん慈悲深い。例えばおばさんは、店に来る常連さんの「ガスがきていない」「雨漏りがひどい」「補償問題はこれから」という被災話に、神妙な顔で相槌を打ちながら、自宅の倒壊については一切話そうとしなかった。
その優しさを、慎ましさを、選手は純粋な目で見抜くのだ。
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