この日、金崎夢生はJリーグ史に名を刻む「偉大なるヒール」となった (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 ただし、口だけの自己主張は周囲を困惑させるだけだが、結果のともなう主張であるから誰もが納得せざるを得ない。PKの場面で起きたやり取りを、「あの人だったら譲ってもいいかなと思いますけど、あの人以外なら譲らなかった」と、鈴木は振り返る。

 もちろん、自己主張だけではない。献身性も備えているから、チームメイトからの信頼が揺るぎないものとなる。この日、金崎は11.724kmもの距離を走り、31回のスプリントを繰り返した。これはともにチームトップの数値である。左足に爆弾を抱えながらも誰より走り続けたのが、この金崎だったのだ。

 それにしても、金崎の勝負強さには恐れ入る。昨年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝では勝利を決定づける2点目を叩き込み、川崎フロンターレとのチャンピオンシップ準決勝では値千金の決勝ゴールをマーク。そして、この日の2得点と、大舞台では必ずゴールを決めてきた。大会3得点の活躍は誰もが賞賛すべきもので、大会MVPの名前が呼ばれると、「俺じゃないでしょ」とおどけてみせたが、「しっかり仕事をできたうれしさはある」と、エースの役割を全うできたことを素直に喜んだ。

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