愛するセレッソをJ1へ。手負いのエース・柿谷曜一朗の悲壮な覚悟

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 説田浩之●撮影 photo Setsuda Hiroyuki

 たとえ本調子でなかったとしても、いるべき人がそこにいるということが、いかに味方にとっては心強いか。と同時に、敵にとってはどれほど脅威となるのか。そんなことをまざまざと見せつけた試合ではなかっただろうか。

 役者が違う、とはこのことだ。

 J1昇格プレーオフ準決勝、セレッソ大阪対京都サンガ。絶え間なく雨が降りしきるキンチョウスタジアムには、左腕にキャプテンマークを巻く背番号8の姿があった。

 FW柿谷曜一朗である。

万全な状態ではない中でも、圧倒的な存在感を示した柿谷曜一朗万全な状態ではない中でも、圧倒的な存在感を示した柿谷曜一朗 昨季、J2降格から1年でのJ1復帰を目指しながら、J1昇格プレーオフ決勝でアビスパ福岡に敗れたセレッソ(試合結果は1-1の引き分け。引き分けの場合はリーグ戦の上位が勝ち上がるルールにより、3位の福岡が4位のセレッソを上回った)。今季こそ、是が非でも成し遂げたいJ1昇格のためには、かつてのエースストライカー――柿谷が復帰することは、何より心強い戦力補強となるはずだった。

 1年半ぶりにバーゼル(スイス)から戻ってきた柿谷にしても、自分を育ててくれたクラブを絶対にJ1へ上げるという使命感は強かったに違いない。

 ところが、である。6月8日のJ2第17節V・ファーレン長崎戦でのことだ。この試合に先発出場した柿谷は右足首を痛め、わずか8分間の出場でピッチを後にした。セレッソの、そして柿谷の思惑が崩れ始めた瞬間だった。

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