監督の目に涙。「いいけど勝てない」湘南スタイルは再生できるか (5ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 自らが築き上げたスタイルへの確固たる信念と、結果が伴わないという現実――。そのジレンマに曺監督は苛(さいな)まれているようだった。

 もちろん、プロの世界では結果がすべてである。一方でプロとは、エンターテイメントの世界でもある。その両立を実現するのは決して容易ではないが、湘南にはたしかにそのひとつの要素が備わっている。いずれも手にできていないチームがあるなかで、それは胸を張っていいものだ。

 湘南のサッカーをたとえるならば、自らの肉体を武器に巨大な敵に立ち向かうアクション映画だ。何度倒されても、その都度這い上がり、精根尽き果てながらも、使命をまっとうしようと必死に突き進んでいく......。

 この日の湘南のホームスタジアムは、まぎれもなくひとつの劇場だった。敗れながらも試合後に鳴り響いた大きな拍手にこそ、「湘南スタイル」の求心力が表れているだろう。

 果たして湘南は、絶望を希望に変えられるのか――。ほとんどのアクション映画は、ハッピーエンドである。

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