監督の目に涙。「いいけど勝てない」湘南スタイルは再生できるか (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

「湘南がやっていることは間違いなくみんな信じていますし、そこに揺るぎない思いはあります」と、長谷川は語る。では、この苦境から抜け出すにはどうするべきか。

「そこ(スタイル)を変えるということじゃなくて、結局サッカーは1対1の勝負になってくるし、最後のアイデアとか、ひとりひとりがもっと落ち着いてやることもそう。いい意味での遊び心が必要かもしれない。それぞれが、そういうプラスアルファの部分を出していかないと、なかなか勝つのは難しいと思います」

 反攻を演出した大竹も、「監督に言われたことを表現することは、みんなできていると思う。もっと自立して、みんなで話し合っていく必要がある」と、個の重要性を訴える。

 究極の献身がもたらす「湘南スタイル」は、ひとつの完成形に達したのかもしれない。さらなる進化を生み出すのは、「個のレベルアップ」に他ならない。選手たちはこの窮地のなかで、それを理解しているようだった。

 一方で指揮官は、自らの力のなさに打ちひしがれていた。まるで退任会見さながらに、曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は涙ながらに言葉を絞り出した。

「今日出た選手に『ありがとう』と言ってあげたい気持ちと、それを結果につなげられない自分の力不足を痛感しています。自分が成長して、選手のよさを引き出すために、あと何をすればいいのか。そんなことではダメだというのもわかっているんだけど、今はそんな気持ちでいます」

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