豊田陽平が語る「イタリア人監督の要求とサガン鳥栖の変化」
豊田陽平(サガン鳥栖)インタビュー(前編)
ファーストステージは5得点だった豊田陽平 セカンドステージ開幕戦を前に、気力は充溢していた。しかし今年になって、アレルギーがひどくなって、薬を服用しないと鼻水が出てくしゃみがとまらなくなることがあった。視界がぼやけるほどで、これには参ってしまう。あろうことか、試合前にその薬が切れてしまっていた。
<大丈夫だ。大量に汗をかけば止まる>
自分に言い聞かせ、試合が始まって体を動かすと、頭は冴えてきた。
それでも90分間、ほとんどチャンスボールは巡ってこなかった。チームとして、明確な得点パターンを作れていない。無駄だと分かっても、入念に動き直し、得点の準備をし続けた。焦りを制御すると、心は澄んでいった。
そして、その瞬間を迎える。
アディショナルタイムも数秒しか残っていなかった。左サイドから来たボール。これが最後のチャンスだろう、という緊張は覚えなかった。平常心。無我の境地に近い。視界に映る景色が、スローモーションに見えた――。
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