FC東京は守備崩壊。ACLの日本勢は戦力より「戦略」で負けている (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 全北現代は4-1-4-1の布陣で、攻撃では1トップのイ・ドングッがバックラインにストレスを与えてきた。屈強な上に老獪さも持った36歳のFWはDFを引きつけ、動かしたスペースにレオナルド、リカルド・ロペスを引き入れる。この繰り返しで、東京の最終ラインを押し下げる。攻撃は最大の防御ということか。

 そして前半35分。先制点で見せたイの陽動は巧みだった。FC東京のバックライン前でパスをつなぎ、スルーパスから左サイドのキム・ボギョンが先制するのだが、イは右に流れてDFを引き寄せ、ズレを生み出していた。

 集団戦でFC東京は敗れていたのである。

 早い話、FC東京はチームとして崩す、チームとして守る、という形ができていない。昨季まで率いたマッシモ・フィッカデンティのFC東京は、攻撃まで手が回らなかったが、組織的な守備を構築し、「ウノゼロ」という勝利の方程式を生み出している。しかし今シーズンはラインコントロールやビルドアップなど、集団の動きにオートマチズムを感じさせない。

 例えば、ハ・デソンは悪いMFではないだろう。肉体的に優れ、対人守備は強く、闘争心も旺盛な選手である。奪い返し、前に出て行くエネルギーは伝わってくる。しかし、ダイレクトパスはほとんど入れられず、判断が遅く、雑なミスパスも少なくない。連係プレーで人を使い、攻撃を増幅させられないのだ。

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