シリア戦での原口元気の起用法が示すハリルホジッチ監督の狙い (3ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

 しかし、日本人はリスクを冒してもいないのに、リスクに対してのマネジメントだけをしようとする傾向が強い。言わば、無難や安全に済ませようとする。ただし、サッカーはゴールを奪い合うスポーツである。無難な安全策だけでは勝つことはできない。リスクを負って勝負に出なければ、勝利は呼び込めないのだ。そして、ここにこそ「デュエル」「野心」といったメッセージを発するハリルホジッチ監督の狙いがある。

 シリア戦での原口は、相手からボールを奪うという「野心」を持ち、相手に「デュエル(=闘う)」を挑んでいった。抜かれたらピンチを招くというリスクに対しては、もうひとりのボランチ・長谷部誠がリスクマネジメントをしていた。仮に原口がリスクを負うのを避け、無難な方法である相手の攻撃を遅らせることを優先していたら、チーム全体が自陣に引くことになる。こうした守り方は失点の確率は低くなるので戦況に応じては必要なことだが、ボールを奪っても前線の味方選手が少ないので、スピードをもって攻撃に転じられないというデメリットがある。

 これに対して、中盤で原口が勝負をかけてボールを奪い切ることができれば、前線には味方が多くいるため、素早く展開して攻撃に転じられる。これがハリルホジッチ監督は標榜する「縦に速いサッカー」の根幹だ。だからこそ、選手個々に「リスクを負う」ことを望み、バランスを崩すことになろうとも、ポジションへの経験値の高さよりも、「野心」や「デュエル」を表現できる選手を重用しているのだ。

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