2015.07.26

【育将・今西和男】 森保 一監督が継承する「サッカー哲学」

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko  photo by Kyodo News

 オフザピッチで今西は「サッカー選手である前に良き社会人であれ」と言い続けた。これは指導したすべての選手に対して言い続けた座右の銘でもある。

「必ず一日に一度、周囲だけじゃのうて自分に目を向けるんじゃ。そのためにはのう、生活のこと、サッカーのこと、今日は何が出来てできなかったのか、どこを改善してどこを伸ばせばええんかを日誌に毎日つけるんじゃ」と命じた。

 反省と課題がしたためられた手書きの日誌は毎朝、河内勝幸コーチに提出することになった。その都度、「この漢字は違う」「言いまわしがおかしい」と赤ペンで指導を受けたがこれが習慣化されると練習に取り組む上で自分の長所と短所が整理された。

 オフトは長崎日大高時代の森保をほとんど気にかけなかったが、練習を観察するうちに評価を変えてトップチームに帯同させるようになった。それでも、まだ日本リーグの試合には出場させてもらえなかった。遠征に行っても、水やネットを運ぶ雑用ばかりであった。辛抱強く我慢していたが、帯同しているだけに、フラストレーションは溜まる。2年目のある日、耐えかねて今西に「なぜ、僕はまだ使ってもらえないのですか?」と言いにいったことがあった。ところが、間の悪いことに前日、森保は自分の練習が終わると別の用事があって、次のトップチームの練習試合を待たずに練習場をあとにしていた。

「お前、昨日のトップの試合も観もせんで、何を言うとるんじゃ! なんなら、どういうプレーをすればチームに貢献できるか、分からんじゃろうが!」

 間の悪いことが重なってめちゃくちゃ叱られた。同様のことが韓国遠征のときもあった。ソウルのチームとの試合が終わって、後片付けを終えてバスに戻って来ると誰もいない。先に乗り込んでポツンと座っていたら、今西が選手たちと一緒に戻って来た。「試合で疲れとる選手がおるのに、何で先に座っとるんじゃ! お前が席につくんわ、それを見届けてからじゃろうが」。エゴイストどころか、他人に人一倍気を遣う森保である。礼儀をわきまえぬはずがなかったが、失態は失態である。先輩たちを前にスパッと叱ってくれたことをありがたく思い、素直に謝った。