福田正博が考察。香川真司の不調の原因と、復活への手がかり (3ページ目)
それに対して、香川は子どもの頃から常に監督やチームメートから一目を置かれるいわばエリートで、アンダーカテゴリの日本代表にも選ばれ、順風満帆のキャリアを重ねてきた。そういう選手が、世界中のサッカーエリートが集まるマンチェスター・ユナイテッドでサッカー人生初の壁にぶつかった。香川にとって未経験の境遇であり、しかもその壁が非常に大きくて高いものだっただけに、対処することは難しかったのだと思う。
もうひとつ、香川は必要以上に自分で自分にプレッシャーをかけてしまっているように感じる。選手というのは誰でも、自身の過去のパフォーマンスレベルをよく覚えていて、そのレベルを指標にプレーする。加えて、高いレベルだった頃を覚えている周囲の期待にも応えたいとも思う。そのふたつがあるため、「こんなはずじゃない」、「もっとできるはずだ」と、自らを追い込んでしまいがちだ。
この傾向は香川のように真面目で繊細な選手ほど強い。「今の力じゃ、こんなもんかな」と開き直ることができれば、精神的にラクになって好転することもあるのだが、簡単に割り切ることはなかなか難しい。
高い意識と目標設定を持つことは、順調にキャリアを積んでいるときはいいが、ケガや不調からの復活を期すときは、過去にうまくプレーできていた自分にとらわれてしまうと、プレーする喜びまで見失ってしまいかねない。実際、それでスランプになってしまい、そこから抜け出せないままキャリアに終止符を打つ選手もいる。
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