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【高校サッカー選手権】初優勝にかける星稜の「ふたつの思い」 (2ページ目)

  • 粂田孝明(ストライカーDX編集部)●文 text by Kumeta Takaaki(STRIKER DX)
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 日大藤沢のDF陣は、まさしく森山、大田の動きに翻弄されていた。ふたりが狭いスペースを突いて、精力的に動き回ることで、星稜は次々にチャンスを生み出していった。劣勢が予想された中、前半だけで3得点を記録できたのも、ふたりの"動き"があったからに他ならない。

 試合後、「やっぱり監督を信じてきてよかったです」と話した森山。決勝でも変わらぬプレイを披露し、「河崎監督に最高の結果を報告したい」と胸に誓った。

 そんな星稜に対するのは、将来を嘱望されたタレントを擁する前橋育英。U-19日本代表コンビの、ボランチ鈴木徳真(すずき・とくま/3年)と、左MFの渡邊凌磨(わたなべ・りょうま/3年)がそうだ。

 準決勝の流経大柏戦でも、彼らふたりの奮闘が光った。流経大柏の厳しいプレッシャーもあって、試合の主導権を失う時間帯もあったが、「途中から(相手の)プレスにも慣れてきた」という鈴木と渡邊を軸に、長短織り交ぜたパスを駆使して、相手DF陣をかく乱。後半途中からは完全に前橋育英がペースを握った。

 その分、後半27分に1本のロングパスから先制点を献上するも、「焦ることはなかったし、試合を諦めることもなった」という鈴木。自分たちのサッカーを信じて攻め続け、試合終了目前、ゴール前でこぼれ球を拾った鈴木がついに同点ゴールを決めた。そして、中心選手の活躍で勢いに乗った前橋育英がそのままPK戦をモノにした。

 こうして、チームの"顔"のひとりである鈴木は結果を出した。一方、もうひとりの"顔"である渡邊は、多くのチャンスを演出しながらも、ここまでゴールという結果を出せていない。流経大柏戦でも、何度か豪快なシュートを放っているが、相手GKの好セーブに阻まれたり、ポストに弾かれたりしてしまっている。

 おかげで渡邊本人は、試合後も肩を落としていたが、試合を重ねるごとに決定機が増えていることは確か。山田耕介監督が「(渡邊は)右足も、左足も、いいものを持っている。いつゴールを決めてもおかしくない」と言えば、渡邊のプレイを間近で見ているMF坂元達裕(さかもと・たつひろ/3年)も「渡邊の動きはキレている。決勝戦では点を取って、最後にいいところを持っていくと思う」と、もうひとりの"エース"の爆発を予感している。

 渡邊のポテンシャルの高さは、チームメイトの誰もが認めているのだ。だからこそ、渡邊自身も最後には「自分がゴールを決めて、チームを優勝へと導きたい」と力強い決意を見せた。鈴木と渡邊――両雄が並び立ったときの前橋育英の強さとはどれほどのものなのか。まだ見せぬその真価は、決勝という大舞台でこそ、発揮されるのかもしない。

 激戦大会のクライマックスを飾る、星稜と前橋育英。注目の一戦は、星稜の"ふたつの思い"が上回るのか、はたまた前橋育英の"ふたりのタレント"がその思いを打ち砕くのか。まもなくキックオフのときを迎える。

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