【高校サッカー選手権】星稜、初V。成就した選手の「思い」
激戦の今大会を象徴するように、延長戦におよぶ死闘となった第93回全国高校サッカー選手権決勝戦(1月12日/埼玉スタジアム)。試合は、延長戦に突入してから2点を加えた星稜(石川県)が、前橋育英(群馬県)を4-2で撃破。昨年、あと一歩で涙を飲んだ雪辱を晴らすとともに、初の戴冠を果たした。
チーム一丸となって戦った星稜が初優勝を飾った。 実力が拮抗しているチーム同士の熾烈な争い。勝敗を分けたのは、星稜の「監督のために......」という並々ならぬ思いだった。
試合直前、星稜の選手たちのもとに、交通事故に遭って入院中の河崎護監督からメッセージが届いた。
「ここまで、おまえたちはよくやってきた。特に今の3年生は、1年生のときに3位、2年生のときに準優勝。それだけの経験をしているのだから、絶対に優勝できるはずだ」
星稜の選手たちは、河崎監督から常に厳しい指導を受けてきた。滅多に選手を褒めることはなく、ちょっとしたことでもよく怒られた。そんな監督からの思わぬ激励を受けて、選手たちは涙し、奮い立った。キャプテンの鈴木大誠(すずき・だいせい/3年)が語る。
「監督がメッセージをくれたこと自体がうれしかった。あれでみんなが、『監督のために勝とう』という気持ちになった」
今大会の星稜イレブンは、河崎監督に叩き込まれたサッカーを忠実に実践してきた。そして選手たちは、試合を重ね、結果を積み重ねるごとに、監督の存在の大きさを改めて感じていた。そうしたムードの中で届いた、監督からのメッセージ。チームはさらに団結力を増し、主力メンバーだけでなく、控えの選手やスタンドで見守る選手たちも積極的に声を出して、試合前の練習から活気にあふれていた。決勝に挑むチームの士気は、間違いなく最高潮に達していた。
「監督のために、絶対に負けられない」――選手全員の思いは、ピッチでも存分に発揮された。立ち上がりからアグレッシブな動きを見せて、積極的なプレスで主導権を握った。前半11分には、前からのチェイシングでボールを奪った大田賢生(おおた・さかき/3年)が鋭い仕掛けでPKを奪取。それをMF前川優太(まえかわ・ゆうた/3年)が決めて、早々に先制点を挙げた。
しかし、U-19日本代表コンビのMF渡邊凌磨(わたなべ・りょうま)とMF鈴木徳真(すずき・とくま)を擁する前橋育英の攻撃も、決して甘くはなかった。個々の鋭い仕掛けと、効果的なパスワークに翻弄され、前半途中からは劣勢を強いられた。受け身に回る時間帯が増えて、後半8分、10分と、立て続けにゴールを献上。逆転を許した。
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