松木安太郎と福田正博が代表監督に求める「条件」とは? (3ページ目)

  • 津金一郎●構成 text by Tsugane Ichiro

松木 一方で、Jリーグで最も結果を残したチームの選手や監督を、日本代表として招集することも必要だと僕は思う。Jリーグ優勝チームと日本代表は、もっと直結しているのが本来あるべき姿だと感じるな。1月のアジアカップの代表メンバーは、2014年のJリーグベストイレブンがほとんど名を連ねたけど、サンフレッチェ広島が連覇を達成した時、ザッケローニ監督の日本代表に呼ばれた広島の選手はいなかった。最終的に青山敏弘はブラジル大会のメンバーに入ったけれど、2012年にJリーグMVP、得点王、ベストイレブンに選ばれた佐藤寿人は落選した。他国に目を向けてみれば、たとえばドイツはバイエルン、スペインはバルセロナとレアル・マドリード、イタリアはユベントスといった具合に、各国代表はその国のリーグで優勝するクラブの選手が中心になっている。だから、日本代表も一度、Jリーグを制したクラブをベースにしてみたらどうかと思う。クラブの監督ごと日本代表になってもらい、Jリーグを制したサッカーが世界でどれくらい通用するのか。そういうことをすれば、日本代表だけではなく、Jリーグの現在の実力やレベルも見えてくる。それくらい大胆な策を、日本サッカー界は講じていかないといけないと思うんだよね。

福田 海外リーグに日本人のトップ選手たちが移籍している現状では難しい部分もありますけど、それはおもしろいですね。松木さんの言うとおりで、現状はJリーグと日本代表がリンクしていないという問題があります。同時に、まずはJリーグ全体のさらなるレベルアップも必要ですね。ドイツやスペイン、イタリアのリーグに比べると、その差はまだまだあると思います。
 
松木 代表とJリーグの連動、そして強化。これは日本サッカー協会とJリーグが連携して策を練らないとできないよね。それから、選手の気持ちとしては、Jリーグで得点王になっても、ベストイレブンになっても、日本代表に選ばれないのではモチベーションが低下するし、ファンだって日本代表にJリーグのクラブ所属の選手がもっとたくさんいないと、Jリーグに興味が向かないでしょ。もうひとつ、日本代表に就任した監督によって、日本サッカーのスタイルが変わってしまうのも問題なのかなと思うな。継続性というのも大事だからね。

福田 その点については、「日本代表の戦い方」というものを確立していかないとダメですよね。いまの日本サッカーは、「世界のトレンド」を追いかけているけど、同じ土俵で、同じスタイルで一流国と戦ったら勝負にならない。それは今回のW杯で痛いほどわかった。強豪国に勝つために現在のトレンドを知る必要はあるけれど、必ずその真似をしなければいけないわけではないし、強豪国に勝つためにさまざまな角度から策を講じないと、いつまでたっても差は埋まらない。

松木 相手の方が、常に先んじているからね。

福田 だからこそ、世界における日本代表の立ち位置を理解できて、日本人のメンタリティーがわかっていて、日本人に向いているサッカーのスタイルを構築できる監督が、日本代表には必要ではないかと思います。

松木 アギーレ監督は、日本のことをあまり知らない状態で代表監督に就任した。もちろん猛スピードで勉強しているだろうけど、その時間はJリーグクラブを率いた経験のある監督よりどうしても少ない。そこをどう埋めていくのか、今後の手腕に注目したいね。

福田
 代表監督は、仮に4年間任期を務めたとしても、実質的な活動日数は300日程度ですから、その短い時間で日本人選手のメンタリティーを理解するのは難しいとは思いますが、期待したいですね。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る