なぜ今年の大宮は「残留力」を発揮できなかったのか? (3ページ目)

  • 土地将靖●文 text by Tochi Masayasu

 もっとも、一番の降格要因として感じるのは、選手たちの「残留への思い」の大きさだ。どれだけの選手が「J2で来年プレイしたくない」ではなく、「大宮をJ2に落としてはいけない」と思いながらプレイしてきたのか。かつての大宮は、複数の中心選手が自ら話し合いを重ねて、難局を乗り越えてきた。長年キャプテンを務めた藤本主税(2012年に熊本に移籍)が、「クラブに言いたいことがあるのは分かるが、今は我慢して残留を果たし、シーズンが終わってから言おう」と、チームを引っ張った年もある。ピッチ上で時に厳しく、叱責の声を飛ばし合い、それでもチームとしてまとまり使命を果たしてきたのが、今までの大宮の姿だ。

 ひるがえって今年の選手たちは、絶体絶命のピンチにありながらも、どこか淡々とプレイしているように見えた。最終節終了後、「チームとしてまとまるのが難しかった」と振り返ったMF金澤慎の言葉は、誰に向けられたものなのか。表面的な駒集めばかりを急ぎ、選手の入れ替えを繰り返し、強化責任者が代わるごとに就任する監督の色が変わり、集められる選手たちの色も変わっていった。そこにクラブとしてのビジョンは、なかなか見えなかった。結果的に、選手たちのクラブへのロイヤリティ(忠誠心・愛着心)も徐々に薄まってしまったように思える。チームの勝利のため、全員が必死の形相でボールを追い、ゴールを目指した最終節のような試合があと少しあれば……。そう思うと、これまでのチーム編成の積み重ねが悔やまれてならない。

 J1での10年間は、もちろん得たものはあっただろうが、失ったものも少なくないように思えてしまう。この現実を受け入れ、降格を転機にクラブとして生まれ変わらなければ、たとえJ1復帰を果たしたとしても、同じことの繰り返しになるだろう。そうならないことを、切(せつ)に願う次第である。

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