豊田陽平、ブラジルW杯と鳥栖監督交代を語る (4ページ目)
「ユンさんがチームに与えていた緊張感は、できるだけ失わずにいたいですね。選手の個性ばかりが強くなりすぎると、全員の方向性が乱れて空中分解してしまう。それは怖い。例えば、鳥栖の持ち味は縦へのボールだと思うんです。でも、選手の中には『鳥栖は蹴るだけ』という批判的論調を見返したいのもあるんですよね。その気持ちは分かりますし、昔よりもつなげるようにはなってきているんですが、そうすると、縦に入れるべきところとつなぐべきところで合わない部分も出てきてしまう。自分も含め、“チームのために”という鳥栖の原点を忘れないことが大事ですね」
清水戦、恩師であるユン監督がスタジアムに観戦に来ていた。何人かの選手にはLINEで連絡が入ったという。
優勝したら、背番号11はどんなメッセージを恩師に伝えるのだろうか。
「ユンさんにですか? やっぱり、『こんな自分を信じて使ってくれてありがとうございます』ですかね。1年目は反抗もしましたし、いろんなことがあってもプレイする機会を与えてくれましたから。感謝しています」
論理的なストライカーは、律儀な正直者でもあるのだ。
ハビエル・アギーレ新監督が選出した新生日本代表のメンバーに、豊田の名前はなかった。
「今回はアピールが少なかったから、“自分はないかな”と思っていたんですが……代表メンバーに関しては正直に言って驚きでした」
彼は苦笑混じりに語った。
「若い選手やわりと経験のない選手が選ばれているのを見て、自分もチャンスがあったはずだし、その点はまだまだ甘かったなと思いました。もっと可能性を信じて、自分にプレッシャーを与え続けてやっていかないといけません。アギーレさんが求めているプレイを一つ二つ出せれば認めてもらえるはず。まずはそれを見極めて、アピールしていきたいですね。
アギーレさんは、『選んだ選手を全員出場させる』ということらしいんで、“それでキャップ付いちゃう”というのは少しありますけど。ザッケローニさんのときは代表の重みというか、(固定メンバーがいて)試合に出るのも大変でしたから。でも、アギーレさんは“誰にでもチャンスがある”というメッセージを伝えたんだと思います。だから、前向きにやっていくつもりですよ」
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