コートジボワール戦。大久保嘉人をワントップに推す理由
今回のブラジルW杯メンバーに大久保嘉人が入ったことで、日本の前線の組み合わせはいろいろな考え方が出てきた。大久保はワントップでもサイドでもプレーできる。先発でも途中からでも行ける。いろんな可能性を秘めているアタッカーだ。
ザンビア戦では決勝ゴールの4点目を決めた大久保 photo by Matsuoka Kenzaburo 現在の日本代表が、本田圭佑中心のチームであることは間違いない。その本田にものを言える選手が前線にひとり入ってきた。大久保というひとりの選手が入っただけでこんなに変わるんだなというぐらい、化学反応や緊張感が生まれ、新たな可能性とチームの「幅」が生まれたと思う。それは、大久保がワントップ、サイド、トップ下のどこでもプレーできることもあるし、何よりも大久保が持っている「経験」が加わったことが大きい。
ワントップ候補には、柿谷曜一朗と大迫勇也もいるが、まだ周りの選手とうまくやろうという遠慮が感じられて、ストライカーとしての主張がやや不足している印象がある。それに対して大久保はどんどん周囲に要求する。積極的に、かつ建設的に言える選手の存在は、チームにとって大きな活力になる。「俺はここにパスが欲しいんだ。なぜならこうだからだ」ということをピッチの上で言える選手がいることで、チームは推進力を得ることができる。
また、大久保が入ったことによって、W杯初出場の若い選手たちがプレッシャーから解放されたはずだ。大久保に注目が集まって、さまざまなプレッシャーを引き受けてくれている。大久保はそのプレッシャーを受けながらプレーできるだけの経験と力を持っている。もちろん、コンディションがいいということもあるだろう。もし大久保が選ばれていなかったら、柿谷や大迫はもっと大きなプレッシャーを受けてプレーしなければいけなかったと思う。
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著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。