OB名波浩が指摘する。J2で足踏みするジュビロの問題点 (2ページ目)
そうしたことを改善して、組織的な守備を実践していくためには、やはり守備の核となる選手がリーダーシップをとらなければいけない。結局、今のジュビロはそういう存在がいないから、相手に対してプレッシャーをかけて、ボールを取りにいく動きはできているけれども、プレッシャーにいかないで待って対応するといったことができていない。
それと、横浜FC戦でも、後半10分くらいから20分くらいまではすごくいい守備をしていた。しかし、体力的には何ら問題ないはずなのに、それを継続できない。90分間とは言わないけれども、あの10分間の守備が70分間でもできれば、相手はなかなか仕掛けてこられない。そうすれば、そのうち相手にミスが出て、ジュビロのチャンスは増すと思うのだが、それが実現できない。
要は、誰かの気持ちがプツンッと途中で切れてしまうのだろう。そうした全体の意識を統率するためにも、リーダーやまとめ役は必要で、その役割を担うべきは、今ならボランチのフェルジナンド。「自分が、自分が」という前面に出ていくプレイをもっと出せるはずだし、彼がより声を出してチーム全体の守備をまとめていってほしいと思う。
ベルマーレの25得点に次いで、18ゴールを挙げている攻撃はまずまず。それでも、ジュビロらしい綺麗な崩し、というのはそれほど多くない。この日も後半、テンポのいいパス回しで左サイドを崩して、MF松井大輔がゴール前へクロス。そのボールを逆サイドで拾ったMF山田大記が、すかさずグラウンダーの速いクロスをゴール前に入れて決定機を作ったけれども、そうした鮮やかな展開はその1回だけだった。
本来であれば、そんな形をもっと増やさなければいけない。ミスしてもいいから、何人かの選手が「イメージを共有できたな」という攻撃を、90分間の中で3回か4回は見せてほしい。
事実、パスサッカーをイメージしていると思うのだが、ジュビロのパス総数は前節の7節終了時点でリーグ14位(※データスタジアム調べ)と下位。後方でボールを回している数が多いチームもあるだろうから、一概に「少ない」とは言い切れないけれども、その数字が示しているとおり、現状ではパスよりも、ドリブルなど個の力に頼っているイメージのほうが強い。
もちろん、個々の仕掛けも大切だ。だが、もう少しパスで、チームとして崩す形を築いていくことは不可欠。相手が研究を重ねてくる今後は、より大事になると思う。
その際にも、重要な役割を果たすのは、攻撃の起点となるパスを出すボランチ。頻繁にポジションチェンジを重ねる2列目の松井や山田を生かせるかどうかも、ボランチ次第。つまり、フェルジナンドに求められることはそれほど多く、攻守両面において、さらなる奮起が期待される。
ともあれ、ジュビロは決して酷い状況ではない。これから、攻守ともにさらによくなっていくはず。心配しなくても、J1復帰は十分に果たせるだろう。それだけの力が、ジュビロにはある。
著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍
2 / 2