セレッソ大阪に加入するディエゴ・フォルランの「意外な素顔」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

 ディエゴ・フォルランがJリーグにやってくる――。年俸は6億円。セレッソ大阪も大盤振る舞いに出たものだ。「南アフリカW杯MVP」が名刺代わりの世界のスーパースターは、やはり格が違うということか。

 では、ウルグアイ代表FWフォルランの実力とは?

フォルランは昨年8月の日本対ウルグアイの親善試合でも来日しているフォルランは昨年8月の日本対ウルグアイの親善試合でも来日している 世界最高峰のリーガエスパニョーラで2度の得点王(2004-2005シーズン/ビジャレアル時代、2008-2009シーズン/アトレティコ・マドリード時代)に輝いているように、天才的にボールを叩く感覚に優れている。だがそれ以前に、予備動作が卓抜。パスの出し手の動きを計算し、自らの体の向きを調整する。その結果、まるで、"ボールの方がフォルランを恋い慕っている"かのように映るのだ。

「ディエゴはいつもいて欲しいところにいて、パスを受ける態勢を作っていたね。だから、私はそこにボールを流し込めば良かった。そして無理なくシュートが打てるから精度も高い。生まれついてのゴールゲッターだ」

 そう説明していたのは、かつてビジャレアル時代にフォルランとチームメイトで、EURO2008ではスペイン代表を優勝に導いているボランチ、マルコス・セナである。

 フォルランはゴールに向かうとき、一切の無駄を省いている。体幹は非常に強く、当たり負けしないが、不必要なフィジカルコンタクトはなし。マークを外す技術が見事だ。

 たとえば、オフサイドポジションにいたかと思うと不意に消え、再び現れたときにはオンサイドぎりぎりでパスを受け、得点を奪う。素人目には偶然に映るかもしれないが、彼はそれを緻密な間合いと計算の中でやってのける。

 そして特筆すべきは、周囲と強く結びつき、巻き込みながらチームメイトの本来の力以上のものを引き出させる点にある。パスの強弱ひとつをとっても、ディテールが適切なだけに、その後のプレーがスムースになり、受け手はいかんなく実力を発揮できる。

 最善のタイミングでボールを引き出し、収め、戻し、また受ける。その繰り返しはお互いのプレースキルを確実に向上させるのだ。

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