福田正博が語る「浦和レッズと日本サッカーの20年」 (4ページ目)

  • 菅原有希子●撮影 photo by Yukiko Sugawara

■Jリーグが切り拓いた日本サッカーの未来

 翌2000年をJ2で戦い、01年からJ1に再昇格。この頃から漠然と引退について考え始めた。故障もあったし、なにより新加入のエメルソンを見て、これはもう無理だなと感じた。エメルソン(現コリンチャンス)は速くて強くて技術もあって別格だった。Jリーグには今でも「うまい」「強い」「速い」という選手はいるが、あの頃のエメルソンのようにすべてが揃っていて「凄い!」と唸るしかない選手は、なかなかいないと思っている。私自身、いつもワクワクしながら彼のプレイを見ていたし、自分自身がJリーグで戦っていくのは、もう肉体的に厳しいと自覚したシーズンだった。

 そう考えていた時、2002年からオフトが浦和レッズの監督に就任。私はシーズン前に、「今シーズン限りで辞めるつもりです」と伝え、オフトは「現役最後のいいシーズンを送ろう」と、我慢強く起用してくれた。ところが、選手というのは勝手なもので、試合に出ていると「まだやれる」という思いが芽生えてきて引退を思い止まろうかと悩んだ瞬間もあった(笑)。ただ、オフトがいたからこそ、私は引き際を間違えずに綺麗に退くことができたと思っている。

 Jリーグがスタートしてからの20年間を振り返ると、Jリーグ誕生の前と後では、日本人のサッカーへの注目度は大きく変わったと私は思っている。20年前にJリーグを創設するときのテーマのひとつだった「日本代表の強化」という面でも大きな成果が出ている。また、香川真司のように海外のビッグクラブでプレイする選手が現れ、選手の育成という点でも成功していると思う。

 私が子どもの頃は、"サッカー選手"というものは職業ではなかった。それが今は、子どもたちがなりたい職業のアンケートでランキングトップになっている。これは素晴らしいことだと思う。

 さまざまな模索をしながら発展を遂げてきたJリーグと日本サッカー界が今後も成長していくためには、すべてにおいてクオリティーにこだわる必要があるだろう。20年間の"開拓期"で生み出し、築いてきたものが成熟していき、これから先の20年間もその着実な歩みが続いていくことに期待したい。

津金一郎/構成

【Infomation】
10/10発売のメンズノンノ11月号では、こちらのインタビューと連動する形で「祝20周年! 今だからこそ振り返る。 Jリーグの話をしよう。」という特集を掲載。
福田正博、山口素弘、福西崇史の3氏のインタビューのほかにも、メンズノンノ誌面に登場した若き日本代表選手たちのクロニクルや、ファッション業界のサッカー好きが語るJリーグの名場面といった見逃せない企画満載です。
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